3DCAD・3Dプリンター・3DCAMなら【SEIZONET】HOME  >  Fusion 360が出力した、サンプルNCを個人的に検証してみました

Pocket

かずばん

勤続約37年、CAM関連の業務に携わりCAMデータ供給や、社内のNC工作機械新規設備の導入検討立上げなどにも携わる。
CAMは、昔の自動プロから始まり20年ほど前に3Dに移行後、GRADE、Space-E、HyperMILLを使用。
社内での立上げなどで携わったNC工作機械は、国内製では、マキノ、オークマ、OKK、安田、ソディック、ナガセ、ワイダなどで、海外製では、Hauser、Moore、Hermle など。

3D CAD

3D CAM

3Dプリンター

CNC

3次元測定器

IoT・AI(人工知能)

更新日:2017.09.03

Fusion 360が出力した、サンプルNCを個人的に検証してみました

Fusion360 のサンプルNC

前回、工場長濵谷さんから、Fusion 360のCAMの説明がありサンプルNCデータが公開されました。

ターゲットとして、素材はスチールでファナック制御の汎用的なマシニングセンターだと仮定して検討してみたいと思います。あくまで、私の個人的な意見としてお考えください。

シミュレーション

本当だったら、削りたいですが、そうも行かないのでシミュレーションでみてみます。
私は、「TRYCUT(トライカット)2000」というシミュレーションを使用しています。結構リーズナブルなソフトです。
年間ライセンス:1万円 永久ライセンス:8万円 ぐらいです。

ライセンス期間と1台の価格(税込)

  • 1年:13,200円
  • 2年:26,400円
  • 3年:39,600円
  • 4年:52,800円
  • 5年:66,000円
  • 6年:79,200円
  • 7年(永久扱い):92,400円

とりあえず、トライカットにNCデータを入力してシミュレーションしてみます。

特に問題なく、削れました。

ただし、荒加工のZ方向の取り代が0.5mmのようで、底面が仕上がっていない状態なので、仕上げの側面加工で食い込んだように見えています。
これはたぶん、サンプルなので底面仕上げを省略されただけの事でしょう(笑)
本来の加工であれば、以下の3工程にすると思います。

  1. 荒加工
  2. 底面仕上げ加工
  3. 側面仕上げ加工

HSM荒加工

HSM(high-speed-machining)は、HSC(high-speed-cutting)や「Adaptive Clearing」などとも呼ばれています。

私は、この種のパスで削った事はないのですが、数年前から興味があり、情報だけは仕入れていました。
実際の加工でも取り入れたかったのですが、会社的にはコストの面もありなかなか実行できていません。
情報のみの知識で書き込みます。

HSMは、上の動画で狭い丸ポケットに入る箇所の加工を見ていただくと分かりやすいですが、トロコイド加工の進化系で、工具の横方向の切込み量が常に一定になる感じのパスです。
ただ実際には、横切込み一定ではなく、工具が工作物と接触する角度を一定にするパスです。
一般的なポケット加工は、輪郭をオフセットしたような経路が広がっていくイメージが普通ですが、この削り方では狭い箇所に入り込む場合、ワークに工具が全面に接触する、フル切削になってしまい、工具の負荷が著しく変化してしまいます。
この『切削関与角・エンゲージ角』が一定になる事で、工具負荷が一定になり、加工が安定し工具寿命も延びるといわれているのが、HSMの特徴です。

HSMの詳しい情報は、次の機会に紹介したいと思いますが、いずれにしてもこのような良質なパスが、Fusion 360で出せるのは驚きです。

では、NCデータを順に眺めてみましょう

Gコードにあまり馴染みがない方もいらっしゃると思いますので説明もかねて、ちょっと長々と書きますので、興味ないかたは読み飛ばしてください。
こちらからダウンロードしたNCデータを参考にしてください。

(T1 D=10. CR=0. – ZMIN=-6. – FLAT END MILL)

最初にコメント分で、工具径やコーナーR、種類などの情報がありいいですね。
特に、最終Z深さがあるのはいいと思います。工具長が短くて、干渉した…なんて事が少なくなります。

N20 G28 G91 Z0.

とりあえず、Z軸のリファレンス点へ退避です。
ほとんどないとは思いますが、リファレンスが最上面より下側にある場合には注意が必要です。

N30 T1 M06

工具交換です。最近はあまりないでしょうか?
昔の機械は、TとM6を同じ一行でなくてはいけなかったり、別々でなくてはいけない機械もありました。
古い機械の場合には、調べておいたほうがいいです。

N60 G43 Z15. H01

工具長補正。具体的にはZ15.に行く間に、H01の情報を元に工具長補正を完成させろ!ですね。
このHの番号は、範囲以内であれば得に決まっていないのが(ユーザ任せ)トラブルになる場合があります。

通常は、T番号とH番号は同じで使う場合が多いと思いますが、会社によって違う場合もありますね。
他社のNCデータで加工する場合、この確認は重要です。

ハイデンハインの場合には、工具は番号・名前・径・長さなど、工具データテーブルで一括で管理されているので分かりやすいです。
コントローラは工具交換した時点で、この工具データを参照しすぐに工具長補正を完成させます。
工具長補正指令なんて必要ないです。ハイデンハインが使いやすいと感じる一つですね。

最近のマキノさんの制御機の工具データ画面は、一括管理方式に近くなっています。

N75 G01 Z1.05 F1800.

さぁ、いよいよ切込みに入っていきます。F1800のスピードに指定されています。

ただ、この切込み動作と切り込んだ後、ポケットを広げていく動作で同じスピードです。
やはり、無垢の素材に切り込む時とポケットを広げる時では加工負荷が違うので、送りは変更したいですね。ここは、Fusion 360の機能で送りの変更が可能かどうか、調査が必要です。

N80 G03 X1.027 Y4.637 Z0.529 I1.027 J4.638

切込みは、螺旋で切り込んでいます。半径がいくつの螺旋かは、IJの値で計算できます。

計算式は、√((Iの値)*(Iの値) + (Jの値)*(Jの値))
※具体的には、 R = √((1.027*1.027)+(4.638*4.638)) = 4.75

工具半径がR5.00なので、0.25の重なりですね。もう少し重ねたほうがいいような気もします。

上のコードでもう一つ、気になる点があります

G03のコードなので、反時計回りの円弧補間ですが、X,Y,Z と3軸同時の指令なので、ファナック的にはヘリカル補間になります。ヘリカル補間はオプションの場合が多いので、動かない機械が出てきます。
ちょっと、汎用性に問題があるかもしれません。

ヘリカル補間での切込み動作の後は、直線補間での指令に変わっているので、このヘリカル補間も、すべてG01の直線補間に変更したほうがいいと思います。
ここも、Fusion 360の機能で螺旋切込みを直線補間にできるか?調べたほうがいいですね。

N155 G01 X4.753 Y0.3

螺旋切込みの後は、ほぼ直線補間で動いていますが、所々「G03」の円弧補間指令も出てきますね。
まぁ、これは特には問題ないと思います。

N3975 G00 Z15.

ここまでで荒加工は終了し、一旦、Z15.に退避します。

N3995 G43 Z15. H01

この指令は、ちょっと気になります。
すでに、工具長補正が実行中ですが、再度、工具長補正をしようとしています。
問題ないかもしれませんが、機種によってはアラームをだしたり、最悪誤動作もあるかもしれません

このコードは出さないようにするか、このコードの前に工具長補正キャンセルを行うか、いちばんすっきりするのは、とりあえず荒工程終了という事で工具交換し、側面仕上工程という事で、再度工具交換からスタートするのがいいと思います。

後の行に「G41」の工具径補正がありますから、側面仕上工程が想定されます。
実際の加工を考えてみると、工具径補正で仕上げの場合、精度的な管理も必要になります。
精度を考えると、一度削った後測定し、その結果に応じて補正を編集し再加工になります。
その場合、加工工程は分割していたほうが便利です。

N4015 G18 G02 X12.5 Z-6. I1.

これは面白いコードですね。G18のXZ平面指令で、Z方向へR1の円弧補間で進入しています。
底面にキズなどつけないための配慮だと思われます。

3D加工の場合は、螺旋で切り込んだりしますが、2D輪郭加工でこのパスを出すのは、ずいぶん気を使っていますね~。ただ、G18を使うか、G01の直線分割がいいのか?意見はわかれるところだと思います。

N4115 G18 G03 X11.5 Z-5. K1.

これも同様に、XZ平面のR1円弧補間で底面より逃げています。
ざっと眺めると、こんなところでしょうか?

Gコードにあまり馴染みがない方もいらっしゃると思い説明もかねて、ちょっと長々と書いてしまいました。

ポストプロセッサ

いろいろ、気になる点を書いてしまいましたが、サンプル出力としては十分だと思います。

結局、同じ機械メーカーで同じファナックでも(…特にファナックは…)、機種により設定変更が必要な場合がよくあります。
また、使う人によって、微妙に操作のさせ方が違う場合もあります。
例えば、工具交換後すぐにクーラントを出す人もいれば、ワークに近づいてから出したい人、スピンドルを回転させてから出す人、回転させる前から出したい人、いろいろだと思います。

実際の形状を加工する経路の指令は、CAMの内部計算で決定しますが、補助的な動作を補うのが、ポストプロセッサの役目です。

とりあえず、私の経験からいろいろ書いてしまいましたが

おそらくFusion 360のCAMでの設定かポストプロセッサの編集で変更は可能なはずです。
Fusion 360は、ポストプロセッサも、ユーザーが自由に編集できそうですから
勉強すれば、自分好みのパスがだせるようになると思います。

今回のサンプルで編集したい点を整理すると、

  • 傾斜やヘリカルで切り込む時と通常の送り速度は変更したい
  • ヘリカル補間はオプションの場合もあるので、直線補間など汎用コードに変更可能か?
  • すでに工具長補正モード中の場合、再度工具長補正コードは出してほしくない

このあたりを編集してみたいですが…
ポストプロセッサ設定ファイル、ちょっと覗いてみましたが、結構複雑ですねぇ。
かなり勉強が必要そうです。(汗;)

このエントリーをはてなブックマークに追加

高機能なCAD「Fusion 360」が学べるセミナー

 Fusion 360 3DCAD入門セミナー